最新の脳科学的観点から(2) ~Newtonより

・脳は視覚情報の要素をまとめあげる

  網膜から取り込まれた光景は、電気信号にかえられ、まずは脳の「外側膝状体(がいそくしつじょうたい:LGN=

   lateral geniculte nucleus)と呼ばれる領域に伝えられる。次にLGNから大脳皮質の「一次視覚野(V1)」と呼ばれる領域へと送られる。

 V1には柱状の「コラム」と呼ばれる構造があり、右目からの視覚情報に反応する領域と左目からの視覚情報に反応する領域が分けられている。さらに、LGNからの視覚情報はここで、「かたむき」「縁」「色」「明るさ」「奥行き」「動き」「質感」などの特徴ごとに分けられ、それぞれ異なる領域で専門に処理される。その後、それらの特徴が大脳皮質のあるせまい領域で、「まとめあげられる」と考えられている。 視覚

 ここで問題となるのが、画像送信である。画像送信はモノクロで奥行き感も少なく、夢に似ている。つまり網膜を伝わってこない、一次視覚野も伝わってこない、もしくは伝わっているのだが、色や奥行きが欠落している。

 大脳皮質で犯人の視覚イメージや想像が再現されているのではないだろうか? 大脳皮質 

 幻覚には色がありうるというので、画像送信と幻覚は異なるとも思える。画像送信はモノクロの幻覚だといえばいえなくもないが。いずれにせよ人の感覚認識としては単純であろう。

 頭頂連合野では空間認識がされるという。 頭頂連合野 しかし、画像送信では2次元平面的である。これも単純な認識のため、というより単純な送信といえる。

 犯人の見た画像は、被害者の見ている画像と異なり、被害者が見ている画像が通常、犯人の送信してくる画像より強く認識される。まぶたを閉じた時や、寝ている時に画像送信が行われるのはこのためであろう。

 

・脳は音をどのように聞き分けているのか?

 私たちのまわりには音があふれている。そのため、ときには異なる音、例えば会話と音楽などが同時に耳に入ってくることもある。私たちは、視覚が重なり合う物体を見分けるように、重なり合う音をたくみに聞き分ける能力をもっている。

 耳から入ってきた音の情報は電気信号に変換され、まずはじめに延髄にある「蝸牛神経核」という領域に送られる。

 次に「境」を経由して「中脳」へと送られる。

 境には2種類の神経核があり、ここでは両耳に届いた音の「時間の差」と「強さの差」が、音源の位置を特定するために利用される。中脳の神経核は、境からの情報と蝸牛神経からの周波数の情報を集め、音源の位置と音の性質の処理が行われる。  蝸牛神経

 そして次に信号は、視床の内側膝状体を経て、大脳皮質の「一次聴覚野」へと伝えられる。一次聴覚野には同じ

 周波数に反応するニューロンが順序よく配置されていて、皮質に対して縦方向に、同じ周波数に反応するニューロンが集まってコラム構造をつくっている。この領域を「周波数局在地図」と呼ばれている。 一次聴覚野  

    音声送信が、お経のようではなく声色があるということは、周波数分けされる一次聴覚野前で信号を受信していると思われる、つまり大脳ではなくやはり、蝸牛か中脳か視床で受信していると思われる。

 このように、聴覚も視覚と同じように音を周波数などの特徴ごとに分けて、脳で情報処理を行っているのだ。しかし、音のどのような成分(特徴)が脳のどこで処理されているのかについての詳しいことは視覚ほどは明らかにされて

 いない。カリフォルニア大学のマイケル・マツェニックとクリストファー・デジャームらの研究によると、周波数以外の音の重要な特徴には、「音のはじまりと終わりの存在」「特別な周波数の組み合わせ」「周波数の変化」があるという。

 私たちは、これらの音の持つ特徴を脳で分析してまとめ上げることで、音を識別し、その音が会話なのか音楽なのかを聞き分けているようだ。

 幻聴と音声送信について「人の声」は幻聴で、要素性幻聴は、「物音」の幻聴になる。例えば、・ドアの閉まる音がする

   ・時計の針の音がする

 要素性幻聴は、それが幻聴なのかどうかが判断しにくい幻聴になるという。もしかしたら本当にドアが閉まっていたのかもしれないし「日常感」に乏しい。

 要素性幻聴は、統合失調症でも認められる幻聴であるが、人の声と比べると出現する頻度は低めである。また統合失調以外の疾患でも出現することがあり、自閉症スペクトラム障害の方や解離性障害の方にも認めることがある、という。

 つまり、音声送信で、音楽が常に流れているとかいうことは、統合失調症としてはレアなケースといえる。犯人の声送信は、犯人が話したことばをダイレクトに、もしくは犯人の耳を介して、送信してくるものと思われる。音送信は、犯人が聞いた音を、犯人の耳を介して送信してくるものと思われる。犯人の頭の中でイメージした音など人生経験の少ない犯人にとって送信できないと思われる。

 なお、犯人の心情が音化して送信されてくることはありうると思われる。つまり、場の緊張が高まってくると犯人の声色とともに、BGM(背景音)が上がってくるとか。   

 音声送信の音の部分は、常時、もしくは頻繁に聞こえるという場合、統合失調症ではない確率が高いといえそうである。